ディプレッションからの大脱走

ディプレッションから逃げている男の日記です。でも、きっと生きていればいいことあるよ♪

感覚で捉えれば、「世界に一つだけの花」は当たり前だった(養老孟司の文章から)

イナホです。

 

以下の本を読みました。今回は、読書感想文です。

 

養老孟司『遺言』、2017、新潮社

 

もし面白いとお感じになったら、ぜひお読みになってはいかがでしょうか。 

 

五感で捉えてはじめて、現実になる

本書の養老孟司氏の話の前提は、以下に集約されるであろう。

 

 科学は客観的だ。以前はそんな言い方をした。いまでもそう言う人があるかもしれない。客観とはなにか。感覚所与に依存することである。自然科学ではそれを実験という。

 現物、現実、モノなどというのは、ヒトの側から見れば感覚所与のことである。ここで引っかかった人は、「唯一客観的な現実」を信じているのではないかと思う。自分の外に、自分がいようがいまいが、唯一客観的な世界が存在している。ここでの私の議論はその前提を採用していない。世界をとらえているのは、あくまでもあなたの五感である。(p41-42)

 

自分と無関係に存在する、現物、現実、モノなどというものは、存在しない。自分の五感で捉えて初めて、それらは初めて現物、現実、モノになる。

 

「世界に一つだけの花」は、当たり前の話である

結構前に、別の養老孟子氏の本を読んだときに、本書の以下と同様のことが書いてあった。

 

 だからこそ逆に、SMAPは「世界に一つだけの花」と歌った。「世界に一つだけの花」は交換可能ではない。なぜ花なのかというと、花は見るもので、つまり感覚的な存在だからである。ヒトを感覚で捉えたら、平等どころの騒ぎではない。みんなそれぞれ違うに決まっている。だから「世界に一つだけの花」はその意味では当然である。

 その当然をわざわざ歌い、それがヒットするのは、当然が当然ではない社会だからである。つまり違いを主張する感覚所与が排除されている社会だからである。(p58-59)

 

この歌を貫いていると思われる「ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」なるフレーズ。言わんとしていることはわかるのだが、改めてみんなに向かって大きな声で歌っているのを聞いたら、「??」だった歌。

 

以前同様の話を読んだときに、はっきり気付かされた。「??」に思った理由は、「そんなことは当たり前」だから。当たり前のことをそのまま歌にしたように聞こえたから、変に思ったのだ。

 

もっと言えば、「オンリーワンでない人間」と言うものがあるとしたら、それは人間が頭の中で考えた、抽象的な人間と言う概念。目で見たり声で聴いたりする人間、つまり感覚から得られるそれぞれの人に、全く同じ人なんて絶対にいないはず(それは花だって同じ)。

 

この歌がこれだけ売れた理由は、以下のどちらかではないかと思う。

  1. 一人一人の人間の姿も、抽象的な人間と言う概念で一括りにされて、無視されがちな社会に対する反感から(これは養老孟司の上記引用「当然が当然ではない社会だから」というのと同じ)
  2. 単に人気グループのSMAPが、メロディーの良い覚えやすい歌を出したから

 

意識と感覚で、感覚が敗北すること

以下は昨今の法律議論について当てはまるのではなかろうか。

 

 意識中心の都市型社会では、個々の具体的な局面で感覚側が社会的には敗北することが多い。意識側からすると、反対ばかりするな、対案を出せということになる。しかし対案は意識的に作られる。それなら対案を出すことは、根本的には意識という土俵に乗ることである。だからこそ、感覚が関わる場合には、反対する側はひたすら反対という態度に出るしかなくなる。しかも感覚は差異の列挙であるから、統一がもともと困難である。(P168)

 

 

国会で議論する法律は、意識で作るものだろう。意識して「こうすれば、社会はこうなるはずだ」と考えて、法律を作ろうとする。あるいは、法律を変えようとする。

 

でも、「こうすれば、社会はこうなるはずだ」がわかったところで、最後には感覚の問題が出てくるのではなかろうかと思う。感覚では、その法律で変わっていくであろう社会が受け入れられない人たちの場合である。

 

そこで、ただ「反対する側はひたすら反対」しているだけにしか見えない状況が出現する。感覚ではとにかく変わっていくことが受け入れられないのに、対案を出そうものなら、同じ意識と言う土俵に乗って、変わっていくこと自体は受け入れたことにもなってしまう。

 

また、団結しているように見えても、感覚は人によってバラバラでもあり、統一することは困難。そして、感覚で訴えていることは、意識側に理解してもらうことは難しい。

 

 

以下の本になります。

遺言。 (新潮新書)

遺言。 (新潮新書)